ぴ~まん’s ワールド

仕事も遊びも楽しくやろう 楽しくなければ人生じゃない

The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛

    The Lady
アウンサンスーチー ひき裂かれた愛



非暴力を貫いてミャンマー民主化に挑み、

アジア人女性初となるノーベル平和賞を授与された活動家、

アウンサン・スーチーの実録ドラマ。

長きにわたる軍事政権との戦いと、

それを支えてきたイギリス人の夫と息子たちとの絆を描く。

主演のミシェル・ヨーが、ビルマ語のセリフを完全習得するだけでなく、

本人のしぐさやなまりまでも研究し熱演している。


ビルマ(現ミャンマー)建国の勇士として

亡き後も国民から敬愛されている将軍を父に持つ、アウンサン・スーチー。

イギリス人のマイケルと結婚し、生活の拠点をイギリスに置いていたスーチーは、

1988年、母の看病のためにイギリスから祖国のビルマへと戻った。

そこで彼女は軍事政権が若者たちの民主主義運動を弾圧するのを目の当たりにして

ショックを受ける。

そんな中、民主主義運動家たちが彼女の帰国を知って選挙への出馬を訴える。

彼らの切実な思いを知って立候補を決意し、民衆の前に立つスーチーだが、

それを機に軍事独裁政権から想像を絶する圧力をかけられる。



15年にも及ぶ自宅軟禁生活。

政府軍はスーチーの力を恐れ、

民衆やメディアとの接触を絶つために自宅軟禁を命じた。

国外へ出たら二度とミャンマーへ入国させない政府軍のために

家族と離れ離れになるのを覚悟の上でミャンマー民主化のために立ち上がり、

最愛なる夫が末期癌と知っても会いに行くことも出来ず、最期も看取れなかった。

軟禁生活によりスーチーは、政府軍以外に罪悪感にも悩まされた。

ミャンマー民主化のために立ち上がったスーチーだが、

それにより、多くの支援者が逮捕・拷問・虐殺されることになってしまったからだ。


夫マイケルは、スーチーを助ける為にノーベル平和賞受賞のために奔走し、

アジアをはじめとする世界の国々が後押しをしてようやく軟禁生活から解放される。

選挙に勝利し、民主主義国家が誕生するかに思えたが、政府軍が変わらずに支配し、

スーチーが諸外国へ自由に出られるようになったのは今年になってからである。



見どころはたくさんある。

1991年にノーベル平和賞を受賞するが、

軟禁され、受賞式には出席できなかった。

スーチーの代わりに受賞スピーチをした息子の声を

ラジオで必死になって聞き、涙する。

今年6月の本人の受賞スピーチは、実に21年ぶりに実現したものである。


「あなたが政治のことを考えなくても、政治はあなたのことを考える」

本作の中に出てくる言葉である。

公約も守らない、決められない今の日本の政治家たちには耳の痛くなる言葉だろう。


アウンサン・スーチーの非暴力主義は、ガンジーを彷彿とさせ、

父アウンサン将軍は、

死んだ後もその信念が影響を及ぼしているキング牧師のようである。


主演のミシェル・ヨーは、初め、アウンサン・スーチーに似ていないと思ったが、

観ているうちに本物のアウンサン・スーチーに見えてくる。

政府軍の幹部役の役者はド素人?

このヘタさがアウンサン・スーチーの仕草や口調を見事に真似、

最後には本物と勘違いしてしまうほどのミシェル・ヨーの演技を際立たせている。


イギリスのサッチャー元首相の通称 「鉄の女」 に対し、

アウンサン・スーチーは 「鋼鉄の蘭(Steel Orchid)」 と呼ばれている。

どんな苦難にも屈しない彼女の勇気と信念はまさに鋼鉄であり、

同時に夫を思い、息子たちを思い、

ミャンマーの民衆を思う彼女の優しさ、温かさは、

気高い蘭の花である。



彼女の強さだけではなく、家族愛に満ちた、

人としての基本となるものも上手く描かれた映画です。

ニュースでは報じられない過酷な人生。

アウンサン・スーチーという人が、どういう人なのかを知るためにも

平和を願う多くの人に観てもらいたい素晴らしい作品です。


☆5つです!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆