剱岳 |
点の記 |
険しい山を舞台に描いた新田次郎の同名小説を
本物の大自然を撮影することにこだわり、
危険を冒しながら圧巻の雪山シーンにも挑んだ。
ビデオ撮りのピントの甘い画面や嘘臭いCG満載のデジタル映像が氾濫する中、
陸軍測量手の柴崎芳太郎(浅野忠信)ら7人の測量隊。
誰も登ったことがないと言われていた剱岳山頂への登り口を探す。
同時にヨーロッパでの登山技術や登山具を要する山岳隊も剱岳初登頂を目論んでおり、
陸軍は面子を重んじ、なんとしても測量隊が初登頂することを命じた。
柴崎は 「何のために登るのか・・・?」 疑問を持ち始めるが・・・・。
この映画は、大自然の厳しさ、豪快さ、神々しさ、美しさと共に
優しく、温かく、思いやりがあり、作品全体に安定感がある。
木村監督がカメラマン時代から築いた被写体に対する愛情と尊敬、
仕事をきっちりとこなすプロフェッショナルの責任感と仲間への信頼の大切さが
ただひたすら山を登るこのシンプルな物語を感動的なものに仕上げた。
映像の素晴らしさだけではなく、内容的にも一本芯の通った秀作である。
何よりこの映画が感動的なのは、作り手の誠意や情熱はもちろん、
制作に携わった者すべての努力と苦労の果てに到達した幸福感と
充実感が見る者に伝わることだ。
肩書きや役名のないエンドロールにもその意図することがよく表れている。
明治40年・・・・大した登山装備もなく、
よくぞあの険しい山に登ったものだと感心する。
測量隊はまさに命懸けだった。
そしてそれを命じた陸軍は、
お山の大将で、自分達の名誉、面子だけで行動していたと思わざるを得ない。
制作者、俳優陣も連日の山登りで苦労が絶えなかったと思う。
過酷な撮影を経てまさに命がけで捉えたその映像の数々は、
山をよく知らない者にも山の素晴らしさ、恐ろしさを十二分に伝え、
実話だからこその人間模様に感動させられる。
☆5つです!
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