大都市・江戸は武家の町であり、人口の半数を占めていた商人・職人達は、
江戸市街のわずか15%の地域に押し込められ、
狭い長屋で肩を寄せ合って生きてきた。
それだけに互いに助け合い、共に生きていく気持ちがないと、
まさに共倒れになってしまう。
どうしたら気持ちよく、争いごともなく、楽しく暮らしていけるのか、
町のリーダーたる町年寄をはじめとする人たちは、
さまざまな知恵を出し合い、ひとつの生活哲学を作り上げた。
それが 「江戸しぐさ」 である。
「江戸しぐさ」の基本は、互助・共生の精神。
対等な立場で相手に敬意を持ち、自らは誇りを持つ。
しかしこれは「気づかい」や「心づかい」「心構え」であり、「作法」ではない。
その場で自然に出る身体に染み付いた振る舞い方で
その行いによって互いが気持ちよく過ごすことができる。
そのための知恵なのである。
だから「江戸しぐさ」は、非常に当たり前な、常識的なものばかりである。
突飛な行為をするものなどひとつもなく、
誰もがひとつやふたつ毎日行っていることかもしれない。
しかし、このしぐさを忘れてしまっているのが現代人なのである。