垣谷美雨著『七十歳死亡法案、可決』
去年、本屋で見かけておもしろそうと思っていたが、ようやく読むことができた。
今の日本が抱えている社会問題が、暗く悲惨なものにならずに書かれている。
日本の少子高齢化は予想を上回るペースで進み、
年金制度は崩壊し、医療費はパンク寸前。
介護保険も財源が追い付かなくなってきた。
長寿国である日本。
その長寿が国の財政を圧迫し、
介護する家族の人生を台無しにしていることが浮き彫りになってきている。
そんな折り、時の総理大臣が大ナタを振るった。
「七十歳死亡法案」である。
『七十歳になったら安楽死しなければならない』
参議院の全廃、それに伴う議員数の大幅削減、議員報酬３分の１などなど
次々と改革を進め、国民から圧倒的な支持を得た総理が打ち出した法案だけに
説得力があり、あっさり可決された。
この法案が可決されたことで残りの人生をどう過ごすか、
多くの人たちの生活環境が変わっていく。
介護する者、される者の意識が変わり、家庭崩壊に至ってしまう家族も出てくる。
そんな身につまされるような話を暗くならずに進めているだけではなく、
就職難にあえぐ若者、ブラック企業にいいように使われ続ける若者、
介護職の過酷な現状など、現代の日本が侵されている現況もリアルに描かれています。
改めて身の回りのこと、家族のこと、社会のことを考えさせられる一冊です。
考えさせられるけど気難しい本ではありません。
幅広い世代の人に、老若男女を問わず読んでもらいたい本です。
何故、この本の話題がもっと広まらないのか、不思議なくらいです。
面白おかしくとまではいかないけど楽しく読める本ですから
機会があればぜひ読んでみてください。
