ぴ~まん’s ワールド

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江戸しぐさ 「行き先は聞かぬ」

近所を歩いていると知り合いがどこかへ出かける場面に遭遇することがある。https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/p/p-man99/20010101/20010101002640.gif

ついつい 「どちらへ?」 と聞きたくなるものだが、

江戸では、こんな場合、行き先を聞くのは野暮とされた。

どこへ行こうと相手の自由ということが江戸庶民の基本的な考え方であり、

相手のプライバシーはそっとしておくのが江戸のおとなの対応だったからである。


こんな場合は、

「お出かけでございますか?」 とだけ言うのが正しいしぐさだった。

相手が引き止めたり、「実は、どこどこへ・・・・」 と喋らない限り、

そのまま会釈して去っていくのがマナーとされていた。

相手が喋ったからといって、どんどん相手の領分に踏み込むのは

品の無い対応なのである。



江戸では、春は花見、夏には花火、各地域ごとでの祭り、社寺境内での市など

季節ごとに様々な祭りや行事があり、

人々はこうした行事に参加することで季節の流れを感じるとともに、

自然の恵みを享受していた。

暮れは、大晦日までは年末らしく大掃除や買い物、借金の取立てなどで

騒がしい日々だが、正月を迎えると一転して町は静かになる。

七日の松の内が過ぎるまで静かにゆったりと新年を祝うのだ。

近年は、元日から多くの店が営業しているから、

年末のうちに食料を買い溜めする必要もないし、

正月は身綺麗にして迎えたいと着る物を新調することもない。

だから年末の慌しさ、新年の静けさが失われ、お正月気分が薄れてしまっている。



「相手のプライバシーはそっとしておく」 といっても

現代のように隣りに住んでいる人がどんな人なのかも分からないというのとは違う。

日頃は、隣近所和気あいあいで醤油や味噌の貸し借りなど気軽に行われていた。

世話好きな江戸下町気質の中にも

相手のプライバシーは尊重するといった気配りがあったのだ。