『江戸しぐさ』は、日常生活のマナーだと
傘かしげ、肩引き、時泥棒、こぶし腰浮かせなど
取り上げられたり、道徳の教科書にまで載っています。
しかし、江戸時代に『江戸しぐさ』なるものはなかったという話が最近出ています。
「江戸っ子大虐殺」があって当時の資料が全て焼き払われて失われたとされ、
『江戸しぐさ』に関する歴史的資料は何もありません。
越川禮子さんは、資料は失われたけれども、口頭による伝承だと説明しまています。
江戸っ子大虐殺のごくわずかな生き残りが、様々な困難を乗り越えて、
そこには歴史上の有名人や大きな組織が登場し、秘密結社なども現れるといいます。
これが本当なら、とてつもない裏の歴史、ものすごい隠れた真実であり、
越川氏は非常に特別な存在ということになります。
しかし、歴史学的には何の証拠もなく、ちょっと信じ難い話にもなります。
歴史の研究家らが『江戸しぐさ』継承の矛盾点を指摘し、
作家(文明史家)の原田実氏は、
『江戸しぐさの正体:教育をむしばむ偽りの伝統』を出版しています。
『江戸しぐさ』の由来があまりにも荒唐無稽、事実無根と批判され始め、
その結果、掲載していた教科書も、今後の掲載はないと報道されています。
これらのことから「江戸時代に『江戸しぐさ』なるものはなかった」
という話になっているようです。
江戸時代に『江戸しぐさ』が実在しなかったとしても
『江戸しぐさ』は、大勢の人が生活していく社会におけるマナーであり、
人道上のモラルを教えてくれるものに違いはありません。
子供(一部の大人も)の道徳教育の手引きとなるものであり、
大切に継承していかなくてはならない教書だと私は思っています。
歴史的資料、文献がなく、歴史研究者らを納得させられるような証拠が
何もないからダメだとするのはいかがなものか。
江戸時代に実在せず、仮に明治以降の作りものだったとしても
「良いものは良い」で良いではないですか。
『江戸しぐさ』は、決して「教育をむしばむ偽りの伝統」ではありません。